ハートマス研究所のレポートより【心臓の科学】


心臓神経学:心臓脳

心臓が神経系を通して脳に大きな影響を与えていることが発見され、新しい心臓の神経学の研究が進んだ。その結果、心臓には「心臓脳」と言えるほど複雑な神経ネットワークが存在することが明らかになり、心臓神経学と呼ばれる分野が確立されている。現在「心臓脳」と一般に呼ばれる固有の心臓神経系は、複雑な神経節、神経伝達物質、たんぱく質、支持細胞からなる精妙なネットワークであり、それは脳にあるものと同じである。「心臓脳」の神経回路によって、それが頭の脳とは無関係に、学習、記憶、決定、さらには感じ、知覚する能力を持つことがわかっている。

(図1.2)人間の心臓にある相互作用する内在心臓神経節の顕微鏡写真。右は拡大写真。薄い青白い構造体は神経節を結ぶ軸索網。
(写真提供/J・アンドリュー・アーマー博士)

脳から自律神経の交感・副交感神経枝を通って下行する活動は、血圧、心拍数、心拍リズム、ホルモンを感知する心臓の感覚ニューロンから発する信号と一緒に、心臓の内在神経系に組み込まれている。

内在心臓神経系の生体構造と機能、そしてその脳との関係性は心臓神経学者たちによって広範囲に研究されている。心臓から脳へ送られる情報量は、脳が心臓へ送るものよりはるかに多いことが明らかにされている。最近の研究では、心臓と脳との間の相互神経作用がこれまで考えられてきたことよりもはるかに複雑であることがわかっている。さらに、内在心臓神経系には長期と短期の記憶機能があり、それは中枢神経指示系とは無関係に働く。

内在心臓神経系で情報が処理されると、適切な信号が心臓の洞房結節や他の組織に送られる。内在心臓神経系からの神経メッセージは、脊髄と迷走神経にある上行神経経路を介して脳に送られ、中脳、視床下部、視床、扁桃体を通って大脳に届く。

ホルモン分泌腺としての心臓

心臓が分泌するホルモンによって、心臓は生体化学的にも脳と身体とコミュニケーションしている。一般にはホルモン分泌器官として考えられてはいないが、心臓は実際に多数のホルモンと神経伝達物質を分泌していて、身体全体に広範囲な影響を与えている。

心臓は1983年に、新しいホルモンが心臓の心房で生産され分泌されることが発見され、ホルモン系の一つとして再分類された。このホルモンはいくつかの名前で呼ばれている・・心房性ナトリウム利尿因子(ANF)、心房性ナトリウムペプチド(ANP),心房性ペプチドである。

通常バランスホルモンとも呼ばれ、それは体液と電解質のバランス調整に重要な役割を果たし、血管、腎臓、副腎や脳内の多くの調節中枢を調整する助けをしている。心房性ペプチドの増加は、ストレスホルモンの分泌を抑え、交感神経系の流出を減少させ、免疫系と相互に作用するようである。さらに興味深いことは、心房性ペプチドが動機や行動にも影響を与えることが実験から示されている。

その後、心臓に脳と神経節にあるニューロンからだけ作られるとかつて考えられていた神経伝達物質のカテコールアミン(ストレスを感じた時体内に増える化学物質:ノルエピネフリン、エピネフリン、ドーパミン)を化学合成し放出する細胞があることが発見された。さらに最近になって、神経伝達物質として作用し、一般には愛のホルモンや社会的結合ホルモンとして知られるオキシトシンを心臓が製造分泌することも発見された。よく知られている出産と授乳時の機能だけでなく、オキシトシンは認知、寛容、信頼と友情、そしてペアの永続的関係性にも関わっていることも明らかにされている。意外なことに、心臓で作られるオキシトシンの濃度は、脳で作られるものと同じ程度である。

(参考写真)https://www.heartmath.org/our-heart-brain/

Our Heart Brain – Little Brain in the Heart

出典:HeartMath Institute  https://www.heartmath.org/